CIA(公認内部監査人)とは?
CIAというのはアメリカにある『The Institute of Internal Auditors 』(略称:IIA)という企業の内部監査を系統立て、世界基準を示す機関が認定する資格です。
まぁ簡単に言えば、『然るべき倫理観を持ち、原理・原則に則った内部監査が出来る人だよ!』と試験に合格することによって認定してくれます。
このCIAとは別に内部監査部門に所属している方が多く取られてる資格で「内部監査士」というものもあります。
こちらは日本内部監査協会が主催する内部監査士認定講習会を修了した人が得られる国内資格で、講習受講後に8,000~10,000字の論文を書くことによって称号が貰えます。
CIAは一定期間勉強し、3つのPARTから成る試験に受からなければならないという点で内部監査士より、その能力の証明としては上位の資格になると言えるでしょう。
この資格のメリット
まぁ会社で内部監査や内部統制に関わる部門に所属していれば、『この人、基本は分かっているのかな?』という風に認めてくれるといった感じでしょうか。→と、この記事を書いた頃は思っていたのですが資格取ってから1年くらい経ち、認識が変わって来ました。というのも、私が思っている以上に周りの人が資格を持っていることに敏感に反応してきます。社内でも『なんか資格持ってるらしいな』と声を掛けられることが多くなり、資格パワーを今更ながら感じています笑。資格の内容とか全然知らないのに、人って『資格』という肩書きに弱いのですね。
ただ公認会計士や他の士業の様に、『この資格だけで転職出来るか?』というと、難しいと思います。転職サイトの募集を見てると、普通の業務監査だけだと弱いんですよね。業務監査だと海外企業の監査経験(要英語力)が要る感じで、それ以外は金融機関の監査やシステム監査の経験が要る感じです。また必要経験年数も3〜5年としている所が多いので、中堅・若手社員ではなかなか該当する人はいないのではないかと思います。個人的には経験年数よりも、人間性(今話題のIntegrityを持ち話合わせているか?コミニケーション能力があるか?)の方が大事だと思いますが。。
実務で役に立つのか !?
内部監査の実務で『この資格が役に立つのか?』というと役に立つとは思います。
試験のPART1は内部監査の基礎というか姿勢を問うものですが、繰り返し問題を解いてるとこう不思議と価値観がそういう風になって来るんですよね。独立性とか職務の分離とか自然と意識に根付きます。
あとPART3は内部監査に必要なビジネス知識を問うものですが、実際監査を実施していると『あっ、こういうの試験でやったなぁー』という感じで、後から勉強した内容を振り返ることも有ります。
まぁPART3はIT関係の問題が多いのですが、むしろあまり出ない『リーダーシップ理論』とか『動機付け・衛生理論』とか、そっちの方が対象先の人事面とかを見る時に役に立ちます。
どんな試験? 難易度は?
内容別に3つの試験(PART)から成り、すべてに合格すると資格取得となります。すべての試験、4択問題のみです。
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PART1 内部監査の基本 問題数:125問 試験時間:2時間半
PART2 内部監査の実務 問題数;100問 試験時間:2時間
PART3 IT・会計等のビジネス知識 問題数:100問 試験時間:2時間
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これをピアソンという試験会場でPC受験します。(色々制約は有りますが自宅受験も可能です)
受けるPARTの順番は自由に選べ、1ずつ受験して合格を積み重ねられます。ただ期限の制限が有り、初回試験申し込み日から3年以内に全科目に合格し、且つ実務経験の証明を含む資格認定手続きをする必要があります。(期限内に延長申請することによって、1年間延長できます。1回のみ。)
難易度は基本的に簡単だとは思うものの、勉強方法を間違えると永遠に受からないような気もします。(アビタスのホームページでは全PARTの合格率が10〜15%となっています。勉強を始めたものの、途中で諦めてしまう人も多いのでしょう)
というのも問題がそもそも抽象的、且つ問題文・選択文が英語から日本語に訳したものなので、問うてる内容が理解しづらい問題が多いです。(ちなみに英語での受験も可能ですが。。)
スパッと『誰が答えてもこれだ!』と明確に解答できる問題が少ないです。
4択中2択までは絞れるものの、その先いくら考えても決められない、そんな問題が半分くらいあります。
で、これが試験時間に影響します。
普通にやれば全然時間足りるんですよ。
ただ、生真面目に『一から順に完答しなければならない!』となるとハマります。
いくらうんうん唸っても、絞りきれない問題が多数あるからです。
予備校に行く必要はあるのか?独学ではダメなのか?
私が調べた限りではアビタスとTACの2校がCIAの講座を設定しています。
そして『予備校に行く必要があるか?』と問われるとやはり行った方が良いと思います。
やっぱりまず最初にこの試験の言わんとしていることを理解しないと、なかなか個々の問題に対応出来ません。
市販の参考書でも理解できる人はできると思いますが内容が小難しいのでとっつきづらいです。
ただここからがこの試験のややこしいところ。
『予備校の内容を理解し、問題をシコシコやっていればすんなり受かるか?』というとそうでもないのです。
私が通ったアビタスで言えば、講義自体は出題内容にほぼ合致しているものの、テキストの問題が実際の問題とは問い方が違い、アビタスの問題が出来る様になっても解けない問題が多いです。
もっと実際の問題の方が簡潔且つ抽象的なんです。
定期的な一斉試験ではなく過去問も出てないので、最新のしっかりとした問題検証がアビタスでも難しいのでしょう。(まぁでも、その点をアビタスの様な資格学校に求めるのですが。。)
特にPART3でその傾向が顕著で私は2回落ち、3回目の受験でやっと受かりました。出た内容の問題を覚えておき、そこの知識を補うことを繰り返しました。
まぁただ受験申込とかの手続きをフォローしてくれたりもするので、予備校に行くメリットはあります。
日本内部監査協会と実際に資格認定するアメリカのIIAとの兼ね合いで、申請が一気通貫になっておらず分かりづらいのですが、その辺りを丁寧に説明してくれたり、アビタスは有り難かったです。
合格までの費用
ばっくりですが予備校(アビタス)に行くとして下記くらいの費用が掛かります。
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アビタス → 25万
試験代 → 17万(IIAの会員になって、1回も落ちずに)
その他諸々、参考書買ったり → 2万
合計 44万
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なかなか恐ろしいですねー(笑)。
これで試験に2,3回落ちると50万超えます(泣)。私も実際2回落ちているので良く『その試験代で何買えたかなー?』と妄想したりしました(笑)。
あとIIAの個人会員と非個人会員ではストレートで受かったとしても、8万くらい受験料が違います。個人会員の年会費が年2万円なので、まぁここでほとんどの受験者は個人会員になる選択をすると思います。
会社からの補助が有ったり、もしくは予備校代で教育給付金を使ったりでやっと賄える額なのではないでしょうか。まぁ、4・50万の価値にするかどうかは合格後の自分次第ですね。
因みに予備校に行かない場合でも大体合計15万円。参考書買って独学で行ける人もいると思いますが8回くらい落ちると、予備校ストレート合格組みと同金額を払ったことになります。まぁ独学でも1回試験を受けてみて、このまま行くのか予備校に通うのか早めに判断する必要がありそうです。
勉強時間
私は22年6月から勉強を開始し、全PART合格したのが同年12月なので資格取得まで半年要したことになります。
PART 1・2は一発合格、PART3は2回落ちて3回目でやっと受かりました。
勉強は時間にはなかなか置き換えられないと思いますが、私の大体の勉強時間下記です。
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PART1→60時間
PART2→60時間
PART3→160時間
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上記に加えて講義に出たり、模試を受けたりしたのでトータル300時間くらいでしょうか?
アビタスは講義時間含めて約400時間と言っていますが真面目にやればそこまでは掛からないと思います。
受ける順番、勉強法
3つのPARTどれからでも受けられますがPART1→PART2→PART3の順番で良いと思います。
あと受験タイミングですが全PART勉強した後に、PART1から受け始めるのではなく、『1つのPART勉強し終えたら受験、1つのPART勉強し終えたら受験』と分けた方が良いです。
この試験、勉強しなければならない内容は結構多いです。
『全PART勉強してから受験』では受ける頃にはそのPARTの内容を忘れてしまっているでしょう。各PARTに関連性があるという記載もたまに見ますが、そんな連続して内容を理解しないといけない程の緊密な関連性は無いです。特にPART3はPART1,2と別の試験だと言っても過言ではありません。
あと勉強方法ですが内容を講義受けるなり、テキスト読むなりして全体をザーッと理解した後、問題を解きまくり理解の薄い部分は講義やテキストに戻るということに尽きます。
で、これが『予備校に行かず独学で出来るか?』というとチョット難しいと思います。
あとはもし受験したPARTが不合格だった場合、該当PARTを再受験するには、前回の受験日から30日以上の間隔を空ける必要があります。
PART3合格は難しい?アビタスに加えて試した対策法とは
前述の様にPART1・PART2は一発合格したものの、PART3でつまづくことになります(因みにPART1・2はアビタスの問題が出来るようなれば受かると思います)。『オッさんにもなって、こんな落ち込むことがあるのか?』というくらい落ち込み、不合格後はルノアールで3時間くらい放心状態になっていました(笑)。
他のCIA合格者の体験談を読んでいると『PART3は簡単だ!』みたいなことを書いているんですよね、むしろ『アビタスの問題の方が難しいんじゃないか?』と。言ってることは分かるものの、私的には的を得てないんですよね。『本試験の内容の方が確かに簡単だけども、問うてる内容の質や深度が違う』という方が正しいんじゃないかと思います。繰り返しますが問いが簡素かつ抽象的で『これ選択肢のどっちのこと言ってるんや?』という問題が多いです。
PART3は私の感覚だと半分以上がIT関係の問題。アビタスのIT分野の勉強時間比率は35%程なので、ちょっと分野別の対策配分が実際の試験とは合わなく冗長であると感じます。加えてアビタスのMC問題は実際の試験問題とは質が違うと感じる中で、『今後何をどう勉強すれば良いのか?』見通しが立たず、不安を感じました。そんな時、日本内部監査協会のホームページでGLEIMという参考書を見つけました。
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『こっちの方が実際の問題に近いんじゃないか?』そう直感した私は大金をはたいて、この問題集を買います。『確かに問題文の感じは簡素でこちらの方が近い。ただ古いからかなんなのか、出題内容がちょっとずれているような気がする!?』と思いながらもこのGLEIMの問題をやり、2回目の試験に臨むもまた撃沈(泣)。今度はどうしようかと思いまながらも為す術もなく、アビタスの問題を復習しながら3回目にしてやっと合格。正直3回目も受かっていると思いませんでしたが受かってました。3回目になると前回と同じ問題もちょいちょい見かけるため、『前回こっちで解答したけど、こっちなのかなぁ?』という試験勘の方が合格要因としては大きかったように思います。もし、試験に落ちたら『出た問題を覚えている内にメモに残しておく』この作業は必須です。
あと財務・会計系の計算問題。これは5問程度出ると思いますが、これもアビタスの問題よりか簡素な感じがします。この財務・会計の試験対策で簿記とか他の会計講座を受ける方がいるようですが、効果的だとは思いません。というのも、そういう類の問題じゃないんですよ。これも表現が難しいのですがチョット基礎能力的というか、瞬発力が要るというか、できる人は最初からできるし、できない人はアビタスの問題を繰り返してもできないような気がします。結論、サラッとこういう問題が出るんだと勉強した後はあまりこだわる出題範囲ではないと思います。
加えて、IT問題の対策として『ITパスポート』の問題をやられる方がいます。私も出題内容がなんか似てるなぁと思って、Youtubeで解説動画とか観ていたんですが、これもCIA試験対策としてはチョット微妙だと思います。ITパスポートの内容自体は良いし理解も深まると思うんですが、問題や選択肢の質が違うので、なかなか成果が出ずらい対策なのではないかと思います。
試験会場のピアソンテストセンターについて
試験は、ピアソンというテストセンターで受けます。ピアソンは試験主催者から試験環境の提供を委託されており、CIAの他にもさまざまな試験を実施しています。都内には3ヶ所のテストセンターがありますが、いずれも混雑しています。私も受験したい日の約1ヶ月前に予約を試みましたが、希望の日時や場所を選ぶのは難しい状況でした。
私は新宿と市ヶ谷の2ヶ所で受験しましたが、試験環境としては新宿の方が格段に良かったです。市ヶ谷は建物があまり大きくなく、会場内も狭いため、隣の受験者との距離が近く、隣に新たな受験者が来ると集中が途切れやすいと感じました。その点、新宿は建物も新しく、席もゆとりがあるため、リラックスして試験に臨むことができます。ただ、新宿は市ヶ谷よりも人気が高く、予約がやや取りづらい印象でした。勉強の進捗にもよりますが、試験の予約はできるだけ早めに行うことをお勧めします。
合格基準、合否結果
スコアは、各Partいずれも250~750ポイントに換算され、600ポイント(おおむね75%の正答率)以上で合格となります。
テストセンターで受ければ、合否は受験直後に会場の受付の人から渡されるプリントですぐに分かります。
ここがちょっと不親切なのですが合格なら『合格』という印字のみしかありません(受かってても点数知りたいですよね?でも点数は分かりません)。落ちていると『不合格』と印字され、『点数』と出題範囲別の『もう一歩の努力が必要』等のコメントが記載され、『どこがどの程度ダメだったのか?』がばっくりですが分かります。
ただ本当にばっくりなので、今後の具体的な対策を立てるための情報にはなりません。
合格した時のプリント
不合格の時のプリント
実務経験が要ります
試験のことをツラツラ書いてきましたが、資格認定には実務経験も必要です。諸々前提条件はありますが、大学学部卒の方で2年間の内部監査業務経験が必要です。
ただ資格は取りたいけれど『いやいや、内部監査部に来たものの、これから2年居るか分からんわ』という方も多いと思います。
そこで内部監査に直接従事していなくても下記同等の業務が実務経験として認められます。
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品質のアシュアランス業務
リスク・マネジメント
その他の監査または評価実務
コンプライアンス
外部監査
インターナルコントロール
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抽象的で分かりづらいですね(笑)。今の会社はどこもコンプライアンスに厳しいのでフワっとは関わっているものの、実際の実務経験となるのか?判断するのが難しいところです。
具体的に落とし込むと、監査法人の方はまぁ問題ないでしょう。あとは内部統制部門に居た方も問題ないと思います。
なかなか明確に区別出来るものでもないので、認定者(上長やCIA保持者)と相談して決めることなるでしょう。
認定のやり方ですが、認定者(上長やCIA保持者)のメールアドレスをIIAのシステム(CCMS)に入力すると認定者にメールが飛ぶので、その画面上で承認ボタンをクリックして貰えればOKです。
まとめ
この資格は、内部監査業務に従事している方にとって、実務で役立つだけでなく、キャリアにおける箔もつきますので、取得して損はありません。会社によっては、内部監査部門の職員に対し取得を義務付けているところもあるようです。
ただし、試験内容は抽象的で、つかみどころがない印象です。私自身も試験を受ける際、『合格できたのか?』『不合格だったのか?』が分からず、不安を感じました。実際、この試験を受験した多くの方も同じ感覚を抱いているのではないでしょうか。
試験の攻略法をまとめた合格体験記などを読むと、ほぼ必ず『問題を覚えるのではなく、理解することが重要』と書かれています。それはその通りなのですが、この試験では特に、問題の抽象性に慣れることが大切です。中でも『比較的具体的に問われている問題で確実に得点する』ことが、合格への近道だと感じました。
なお、CIA試験に合格した後も、CPE(継続教育制度)に基づく年次報告が必要です。このCPEについての詳細は、下のブログで詳しく解説していますので、よろしければご覧ください。
潰瘍性大腸炎発症から1年程でがん化し、大腸全摘せざるを得なくなった40代商社マン。大腸全摘後も世界を飛び回っています(今はコロナで自粛中)。
潰瘍性大腸炎・大腸全摘手術をした経験やその後の生活を書き綴っています。
(時々熱い想いも書きます笑)